🌿紫と黄色に色づく花｜ツタとゆうなのガラスボウルができるまで

夏も近いと感じさせる蒸し暑さと、陽が落ちる時間が遅くなり、いつまでも夕焼けを眺めていたくなる季節になりました。
午後から雨が降るような日は、午前中から霧が立ち込め、むわっとした湿気に包まれます。
でもそのぶん、植物たちの香りがふわりと強く感じられる、ちょっと特別な時間。

月桃や百合の凛とした香りに、プルメリアの甘い香りが加わり、
あちこちでサガリバナが咲きはじめるこの時期、
工房の周りもにぎやかな空気に包まれています。

🌿くるくると巻くツタに導かれて

そんなある日、ふと垣根に巻き付く「ツタの茎」が目にとまりました。
くるり、くるりと自由に曲線を描くその姿に惹かれて、
「これは、作品になるかもしれない…」と、予定外の制作が始まります。

いつもなら主役となるゆうなの花は、あえてシルエットのように。
擦れたツタの葉は、まるで遺跡から発掘されたような風合いになり、
ガラスの中に「時の流れ」が静かに刻まれていきます。

伸びやかな茎は、器の中を縦横無尽に遊ぶように広がり、
透明な空間に、自由な風が吹き込まれたような作品が生まれました。

🌼光と背景で、花の色が変わる？

このボウルには、ちょっと不思議な楽しみ方があります。
自然光の中では、ゆうなの花はほんのり黄色く発色しますが、
黒いテーブルなど暗い背景に置くと──

なんと、花が「紫色」に見えるのです。

これは光の加減ではなく、背景によって色味が変わるガラス表現ならではの現象。