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2025/03/16 12:57
「どうやって植物をガラスに焼き付けているのですか?」——作品をご覧になった方から、よくこんなご質問をいただきます。
確かに、普通に考えると植物は焼成の熱で燃えてしまいそうですよね。でも、この技術を確立するまでには、20年にわたる試行錯誤がありました。植物とガラスはまったく異なる性質を持っているため、そのまま共存させることはとても難しいのです。
また、私が制作するガラス皿はすべて一点ものです。植物の形や質感は一つひとつ異なり、同じものを二度と作ることができません。だからこそ、自然の美しさをそのまま閉じ込められるよう、工夫を重ねています。
今回のブログでは、そんな制作の過程や試行錯誤について、少しずつお話しできたらと思っています。作品の背景を知っていただくことで、より深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
なぜ植物をガラスに焼き付けようと思ったのか?
✨ ルネ・ラリックの世界
アールデコ期の巨匠ルネ・ラリックが手掛けたガラスアクセサリーや花瓶。彼の作品に描かれる植物は、まるで生きているかのように装飾性豊かに表現され、身近な草花がガラスの中で驚くほど美しく変化していました。その姿に魅せられ、「植物をガラスで表現することは、もっと可能性があるのでは?」と考えるようになりました。2021年東京庭園美術館で行われたトークショーでは、ラリックの作品を詳しく紹介しています。
写真:箱根ラリック美術館
動画:東京庭園美術館「ルネ・ラリック リミックスー時代のインスピレーションをもとめて展」ギャラリートーク
✨ バーティル・ヴァーリンの物語
ガラス彫刻作家バーティル・ヴァーリン氏の作品は、まるで透明な舟形のガラスの中に物語が紡がれているようでした。街や人が遊ぶように展開する世界。そのガラスの奥行きに、私は新たな可能性を感じたのです。「もしガラスの中に植物の時間を閉じ込めることができたら?」と考えました。バーティル・ヴァ―リン氏のインタビューもご覧ください。
動画:「100万ドルのボート」について語るバーティル・ヴァ―リン(ピーター・クルーゼによる「Glasmastaren」の一部)
✨ 植物化石への憧れ
地層から現れる白亜紀の植物の化石。それらは何千万年もの時を超えて現れます。朽ち果てずに岩石に張り付く姿には、原始の逞しさや力強さが宿っています。その一方で、「もし、地層から出てきた植物がガラスのように透けていたら?」と想像しました。時間を超えた美しさを、今の時代に表現できるのではないかと思ったのです。
こうした憧れが積み重なり、「植物をそのままの姿でガラスに焼き付けられないか?」という研究が始まりました。しかし、通常の焼成では植物は灰になってしまいます。そこで、ガラス焼成時に植物が残るための釉薬を開発することにしました。その試行錯誤には、20年もの歳月を要しました。
写真:「世界を変えた50の植物化石」(大英自然史博物館シリーズ5)より
📢 次回予告
いよいよ、植物をガラスに焼き付ける試作が始まります。しかし、そこには想像を超えた難しさが待ち受けていました。次回は、試行錯誤の日々についてお話しします。連続した失敗の話が果たして皆様の興味を引くものか少し不安ではありますが、もしよろしければぜひお付き合いください。本日もお読みいただき、ありがとうございました。