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2020/07/21 11:04

進路で悩んでいた高校の冬、あづみ野にあるガラス工房のテレビ番組を偶然見た。赤々と燃える溶解炉からガラス種を巻き取り、ガラスコップになる過程に驚き、豪雪地帯に育った私は年中暖かなそうな工房にも憧れた。その後京都の美術短大を卒業後、諦め切れずにガラス専門学校に入学した。卒業後病身の叔母の看病や他業種の就職をしたもののガラスを作る現場を諦めることが出来きず、数年後琉球ガラス工房へ就職した。当時北欧のガラスアーティストの作品で、ガラスで作った家や魚や人をガラスの中に沈めた作品に感動した。まるで水の中にぷかぷか浮いているような浮遊感に、私は実物を閉じ込めた作品を作りたいと仕事が終わって自宅で研究を重ねた。

父が他界し、新しい命を授かって独立。アパートの一室が私の研究室兼工房だった。夫が病に伏し、赤ん坊を抱えガラスアクセサリーを作りながら生計を立て、研究を続けた。ガラスは高温で焼き上げるので、ほとんどのものが灰になってしまうので、どのように美しく残すかが課題だったが、どのような製品に仕上げるかも決まらなかった。アール・デコのように植物を美しく見せる製品に憧れもしたが、学生時代に訪れた桂離宮の美しさを忘れる事はなかった。古びた柱に戸板。小さな窓から指す光やバランスの取れた花器や掛け軸が、以前訪れたスペインの小さなイコンを掛けた古い教会のように神聖なものに感じた。時を重ねて侘び寂びを要するその茶室は、何度も修復されながら次の世代に繋げる想いに触れた。その後研究が実を結び、高温でもガラスと共にそのものを焼成できる技法が日本で唯一の製造方法であると「特許」として認められた。現在は植物をガラスと共に焼き、自然の美しさ、力強さ、命の繋ぐ尊さを伝える製品を制作している。この技術を私もまた次の世代に受け継ぎたいと考えている。

Glass Works ちゅき
主宰 吉田栄美子

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